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まいねじゃ!

青森出身岡山県民「まいね」のシングルライフ。

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【読書】尾崎紅葉『金色夜叉』


『金色夜叉』
尾崎紅葉 著(昭和44年11月初版、平成31年2月第51刷)
新潮社

※以降、ネタバレなど含むかもしれませんのでご注意ください。




カルタ会で、美貌の鴫沢宮に一目惚れしてしまった銀行家の息子、富山唯継は
財力に任せて、宮の婚約者である間寛一を海外留学させることも条件に
結婚を迫り、ついには承諾させてしまう。
「愛が財に負ける」ことに絶望した貫一は、宮も含め周囲の人間の情、
自らが幸せになることまで全て拒絶し、高利貸しの手代となり仕事の鬼と化す。

貫一と宮の熱海の海岸での別れ、高利貸しの手代に身を落とす貫一、
雇い主の非業の死までを描く『金色夜叉』、

貫一と宮の悲しすぎる再会、そして貫一に片思いする赤樫満枝を交えた、
泥沼の争いへ…『続金色夜叉』、
貫一が療養のために訪れた温泉宿で、愛のために死のうとする狭山と静に胸打たれ、
彼らを助けようとする『続続金色夜叉』、
命を助けた狭山、静と貫一との静かな生活『新続金色夜叉』
明治期の、未完の大ベストセラーが一挙に読める新丁版!

『黄金夜界』を読んだのをきっかけにオリジナルも読んでみたいと思い、手に取りました。
昔、同じ硯友社である泉鏡花の全集に挑戦して、あまりの文語体のキツさに挫折しましたが、
本著の背表紙にある”雅俗折衷”という評が言い得て妙。
文語体の中に、明治当世流?の英語などを織り交ぜた独特の文体は、
日本が新しい国に生まれ変わろうとする時代の流れや、その場面場面の空気感までも、
時には深呼吸したくなるほど爽やかに、時には息が詰まるほど重苦しく、
読み易くはないはずなのに、まるで音楽を聴くように心の鼓膜を振るわせて入ってくる感じ。
本作品では登場人物たちの服装を細やかに描いているので、
当時の人々の服飾に関する知識も少しあると、より場面を想像する助けになると思います。
#一々調べていたらせっかくのリズムが崩れそうなので、割と(ま、いっか)と
#読み飛ばしてました。。


本作の主題は
「愛は本来、何物(金)にも勝り、命を懸けるに値するものではないか?」
だと思います。
”愛を得るのに金はかからないが、愛を維持するのに金がかかる”ってな名言もありますが、
「金(≒将来の生活)を重視し、純粋な愛(≒結婚)が二の次になっているのでは?」
という嘆きは明治の昔にもあり、現代の社会でも多くの人にとって耳が痛いことと思います。
その思想を、ある意味極端に出しているのが貫一というキャラクターで、
宮との愛が金ごときに負けてしまったことに深く絶望し、また、
「愛を成就できないこんな世なら、いっそ心中しよう」という赤の他人のカップルを助けます。
言わんとすることはまぁ分からなくもないんですけど、正直な感想としては

貫一クソ野郎すぎるやろ!!!ww

熱海の海岸で宮を”姦婦”呼ばわり、足蹴にして別れるシーンなんか、
現代でやったら非難轟々ものでしょうし、その後の周囲の人間はおろか、
宮からの情けまでも一切受け付けず殻に閉じこもり、
 あー、俺の純粋な愛が裏切られたわー超傷ついたわー
 こんな裏切りをする宮、酷すぎだわー。死んで詫びる?それで当然だろ。
と言わんばかりの態度。確かに彼の想いは純愛には違いないのかもしれないけど、
それは彼の幼稚性によるもので、その後の絶望も意固地なだけって気がしてきます。
女性の社会進出が難しかった明治時代。成り上がりの手段は”美貌”くらいしかなかった時代に、
一生安泰な玉の輿に乗ることができる”武器”を持っていた宮。
それを使うことがそんなに悪いか?将来に何の不安もない生活に憧れることがそんなに悪いか?
そう思わざるをえません・・・。

とはいえ、宮との別れの後の生活で貫一が思い当る
「自分は生きているのではなく、死に損なっているだけ」
という人生観。これには非常に深く共感するし、何やかや言っても、
やはり死ぬのは怖いんだろうなというあたりに貫一の人間臭さが出ており、
嫌いになりきれないんですよね。


重ねて言いますが決して読み易い文体じゃないんですけど、所謂”文豪”の
一語一語に”命を懸けている”と思わされる素晴らしい文章は圧巻ですし、
立派に現代でも通用するテーマが根底にあります。
ドロドロハラハラドキドキがお嫌いでなければ、是非にとおススメしたい一冊です。

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プロフィール

HN:
まいね
性別:
男性
趣味:
食べ歩き、コーヒー、ギター、      自転車旅、ボードゲームなど
自己紹介:
「まいね」とは、青森の津軽弁で
「ダメ」という意味。
怒られていても怒られている気がしない、
ダメなのに、ダメな気がしない・・・
そんな錯覚を起こさせる柔らかい語感がステキです。