『しゃばけ』畠中恵 著新潮文庫※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
江戸屈指の大店である長崎屋の跡取り候補である一太郎は、
外出もままならないほど体の弱い一人息子ですが、
普通の人間には見えない妖が見えるという特殊能力があります。
ある日、親の目を盗んで外出した際に殺人事件に遭遇してしまいます。
以降も続く同様の猟奇殺人に、一太郎は勇気と豊富な財力を振り絞り(w)、
家族同然の妖怪たちとともに事件解決に乗り出します。
以前に読んだ
『つくもがみ貸します』が非常に面白かったので、
しゃばけシリーズも読んでみることにしました。
因みに”しゃばけ(娑婆気)”とは、世俗に執着する心などを表した用語で、
一発変換できるところを見るとそこそこ一般的な用語のようです。
…いやもうそれにしても、のっけから出るわ出るわの妖のオンパレード!
妖怪、付喪神、果ては神様まで!冒頭に登場するものを挙げるだけでも
鈴彦姫、ふらり火、白沢、犬神、鳴家、屏風覗き、琴古主などなど…
有名な怪異(”有名”の定義は置いておくとして)がページ狭しと登場して、何とも賑やかです。
表紙、ならびに各章の冒頭に出てくる挿絵の妖怪たちも
どこか可愛らしさがあって目を楽しませます。
主人公の一太郎は何一つ不自由のないお金持ちの家に生まれますが(しかもイケメン)、
ほんの少し外出するだけで数日間寝込むほど体が弱く、そのためか
財力を駆使した行動をしても嫌味を感じさせず、むしろ応援したくなる気持ちが湧いてきます。
日本人の自然観や、未知に対する畏怖、畏敬が生み出したのが所謂怪異で、
身の回りにたくさんいるのは当然とも言えるのですが、それでもなお「こんなにいたのか!」
と驚かされるほどの昼夜問わない”百鬼夜行”が楽しく、そこに主人公に徐々に近づいてくる
猟奇殺人犯というスリルが加わって、極上のエンタテインメント性を持った、
誰にでも自信を持っておススメできる一冊です。
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