『つくもがみ貸します』畠中恵 著角川文庫※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
江戸の片隅で小さな損料屋(=レンタルショップ)の出雲屋を営む清次とお紅。
布団からふんどしまで、何でも貸し出す彼らのお店には、
100年以上大切に使われたことによって人の言葉を理解し、自分たちで動いたりもできる
”付喪神”となったものもあります。退屈を持て余していて、ちょっと尊大で、お節介。
だけど人のことをよく見ている付喪神たちと一緒に、時にはケンカをしながらもトラブルを解決していくお話です。『御宿かわせみ』に引き続き、チャンバラのない時代小説です。
こちらは上述したとおり、付喪神が出てくる江戸を舞台にしたファンタジー小説で、
基本的には事件の経緯や人間模様は付喪神たちが語るといった形になっていて、
主人公の清次とお紅よりも付喪神たちが目立っていますw
100年以上人間に大切に扱われたものたちということで、さぞかし人間に感謝しているかと
思いきや、長年大切に大切にされたことにより、ちょっと尊大なところがあり、
しかも退屈を持て余していておしゃべり好きなので、出雲屋の中は付喪神たちの噂話で
満ち満ちています。傍から見たら楽しそうだけど、近くにいたら煩いだろうな!(;´∀`)
それでも一応、付喪神と人間とで直接会話をしないという暗黙のルールがあり、
お互いの存在を確かに認めながらも、適度に距離を置いているあたりに、
いわゆる古き良き日本の人やものを温かく見守る目だとか、未知のものに対する
畏敬の念のようなものを感じさせ、心地良さを感じます。
この作品、付喪神の活躍や、人間の気持ちの動きなども良いのですが、
江戸の暮らしの事情とか、風俗に関する描写が非常に緻密で、
例えばお金の換算方法とか、深川芸者の気風とか、損料屋が流行る理由など…
この作品の中だけでなく、他の時代小説を読むうえでも役立つような知識が
盛り込まれているので、ファンタジーではありますが時代小説ファンの方にも
おススメですよ!
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