『旅屋 おかえり』
原田マハ 著
集英社文庫※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
昔は鳴かず飛ばずのアイドル、今は旅番組『ちょびっ旅』のナレーション兼レポーターである丘えりこ(通称:おかえり)は、番組中にスポンサーの名前を間違って連呼してしまったことで番組打ち切りになってしまう。それでも旅が大好きなおかえり、彼女を支える仲間たちはひょんなことから旅ができない人の代わりに旅をする代理業者”旅屋”を始める・・・この本の出だしから、東北出身者としては心を引かれずにはいられません。
だって、ちょびっ旅打ち切りのきっかけになる番組の行き先は青森で、
しかもターゲットは”つゆ焼きそば”なのですから。
つゆ焼きそばってのは黒石市名物のいわゆるB級グルメで、
スープの中にソース焼きそばを入れて食すという、何とも冒涜的な一品(!!)。
地元っ子ですら
「ああ、あれね・・・」
と苦笑してしまうような、ニッチグルメなのです(好きな方がいたらゴメンナサイ)。
でもここで、何となくピンとくるんです。日本の隅々まで訪ねて、楽しもうとする
番組の姿勢、おかえりの旅への情熱が。…まぁ、青森出身ならではの贔屓目は否めませんが。
本著に収められた、タレントではなく旅屋としての旅は二つ。
”旅がしたくてもできない”人たちの代わりということで、やはりそれなりに
事情は込み入っていますが、どのキャラクターも皆一生懸命にに生きていて、
そして旅番組のナレーションのような、若干小芝居じみた(!!)、
でも素直でじんわり温かい文体が合わさって、
非常にまっすぐで晴れやかな感動に満ちています。
涙を流してすっきりした目で周りを見れば、どこもかしこも旅してみたい、
魅力的な場所に思えてくるかも!(*´▽`*)
[1回]
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