<円城塔『バナナ剥きには最適の日々』『後藤さんのこと』>
方言の中には、標準語には該当するニュアンスの言葉がないものがあって、
津軽弁にもそんな言葉はいくつかありますが、その中の一つが「~さる」という表現。
目的語を明らかにしない受動態の表現で、意味的には
「(よく分からない超自然的な力により)~をさせられる」と言った感じでしょうか。文法的に解説しても分かりづらいですが、例えば
・しばれできたすけ、いっつもコンビニで肉まん買わさるじゃぁ
(日本語訳:寒くなってきたから、いつもコンビニで肉まん買っちゃうわ~)
・晩方(ばぎがだ)さ赤ちょうちん見っけだら…行がさるべせ?
(日本語訳:夜に赤ちょうちん見つけたら…行っちゃうでしょ?)
みたいな感じで、意図するニュアンスは伝わるんじゃないかと思います。
まぁそんなわけで、別に岡山でも買えるであろう円城塔作品ですが、
姫路の本屋さんで出会ってしまったので買わさりました(*ノωノ)
これまでの作品の中ではユーモアテイストが強く「バナナ型宇宙人」とか、
思わずフフっと笑っちゃう表現もたくさんあります。
でも、バナナ型の宇宙人なんていない(宇宙人としては認めない)といった先入観こそ、
一番邪魔なものであり、そこに揺さぶりをかけてくるのが彼の作品の面白さなんですよね。
[1回]
PR