『バタをひとさじ、玉子を3コ』石井好子 著河出書房新社※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
人よりちょっと(?)食いしん坊なシャンソン歌手、石井好子の著書『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』より半世紀、彼女が遺した単行本未収録の作品を集めたお料理エッセイ集。2010年に亡くなった、石井好子のエッセイを集めたものということで、
この本から彼女の人となりを推し量るのは間違いかもしれないけれど、
それでも敢えて本著から感じた彼女の印象は、
”何らかのソースを秘めた、ムースのような人”だった。
ふわっとして柔らかで、それでいて凛とした形を保っていて、
ちょっと突いてみれば素敵な香りのするソースがあふれ出し、止めどない。
パリでデビューしたシャンソン歌手という経歴がそうさせるのだろうか、
どこかアンニュイというか、ミステリアスというか、
フワとした何かに包まれている彼女の生活。
それでいて、何十年と歌に情熱を注いできた人生と、
食いしん坊…大食いという意味でなく、食に対する好奇心が強いという意味…で、
美味しいもの、とりわけ、手間のかかったお料理が大好きな彼女のその探究心や、
ヘタなドラマよりドラマチックな彼女のパリでの生活は、時には刺激的な香りを放ち、
こちらをビックリさせてくる。
本著の中盤以降は分量もちゃんと載っており、レシピ本としても使える
一冊となっている。たまには、ゆったりした音楽をかけながら、
歌うように、微睡むように、ゆっくり料理するのも良いかもしれない。
作るのはもちろん、彼女の名前を冠した
<玉子グラタン・オーロラソース・ア・ラ・好子>!
[2回]
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