『男の作法』(初版:昭和59年)池波正太郎 著新潮文庫※以降、ネタバレを含むかもしれませんのでご注意ください。
豊富な人生経験を持つ池波正太郎が、寿司や天ぷらの食べ方から、
ネクタイの選び方などファッションのこと、家の建て方に至るまで、
語りに語った内容を収めた一冊。
この本を心の片隅に置けば、あなたの人生変わるかも。まず結論から述べると、『男の作法』というタイトルではあるが、
ぜひ女性にもおススメしたい本である。
また、この本を読むのであればできるだけ若い方が良いと思う。
それだけ、頭の片隅にあるだけでも人生をより良くしてくれるかもしれない
エッセンスに満ちている。
本著は、池波正太郎が様々なテーマについて語った内容を収めたもので、
言いたいことが体系立ててまとまっているものではなく、
具体例がいくつも並んでいるような感じになっているが、
池波自身の生き方にブレがないというか、筋が通っているだけに、
メモなど取らずとも頭の中で非常にすっきり内容をまとめながら
ボトムアップしていくことができる。
この本の内容を一言にまとめるなら”作法”の一言に集約される。
”作法”というと、決まりきった形のある堅苦しいものというイメージがあるが、
実際には(1)他人と(2)自分が、気持ちよくその場で過ごすための
決まり事なのだと思う。そんなまいねなりの解釈で本著をまとめると以下のようになる。
=======================================================================
作法┬(1)自分一人ではなく、他人との関わりあいの中で生きているのだと意識すること │ ├
(1-1)慎ましさをもって他人と接すること │ │ ・知らないことは知らないと言う。知ったかぶりは一番カッコ悪い
│ │ ・良いものは独占するより、皆で分け合おうくらいの余裕を持ってたほうが、
│ │ 結局自分も気持ち良い
│ │ ・他人はすべて、そういう心構えさえあれば、自分をみがくみがき砂になる
│ ├
(1-2)他人への感謝を形に表すこと │ │ ・「サービス料」などの決まりきった形でなく、ほんの少しでも良いから
│ │ 具体的に形にすることによって、言葉より何よりも感謝の気持ちが伝わる
│ └
(1-3)小遣い(自由にできるお金)があることは大事 │ ・一点豪華主義で、他の部分が釣り合っていないと余計に貧相に見える
│ ・家や車など、無理して買うとそのために他のことを
│ 切り詰めなくてはいけなくなり、余裕がなくなると他者への配慮も
│ 欠け、小遣いがまた減ったりなど悪循環に陥るかも
│
└
(2)「プロセス」を大事にし、自分の人生を大切にすること ├
(2-1)死を意識して生きること │ ・自分が(他人も)いずれは死ぬということを考え、生きているうちに
│ いろんな気持ちを伝えていかないといけない
└
(2-1)中期の目標を立てて生活すること ・目標は中期レベルで立てて、その日に向かって何をしていけばよいか、
逆算して小日程を立てるのが良い。また、目標と日々の作業が一目瞭然の
数か月分まとまったスケジュール表があると良い
・計画を前もって立て、時間に余裕を持つことによって、
他人への配慮ができるようになるものだ
=======================================================================
実際は天ぷらの食べ方とか、家計の話などしているだけなのに(w)
ここまで読み取れるのは池波正太郎の軸がしっかりしてるからなのだろう。
上記に示したように、本著の内容は時代によらない普遍的な内容も多く含むが、
彼は、話の内容は時代にそぐわないとか、自分の置かれた環境によるものかも
しれないので「同じようにできるとは考えないように」と言っている。
これは池波の、父性に似た優しさに感じた。すなわち、
自分たちの時代に/環境に合った”作法”を考えてくれというメッセージだと思った。これはネクタイなんかと一緒で、
誰かのプレゼントでもらうのも勿論嬉しいのだけど、
やはり自分の持っているスーツ・シャツ・靴を鑑みて、
自分で似つかわしいものを選べるようでないとダメなのだ。
その感覚こそが、人間をみがくということなのだろう。
重ねて言うが、この本は男女問わずにおススメできる本であり、
読むのであればなるべく早く読むべきだと思う。
本著の内容を頭の片隅に置いて、少しずつでも実践できたら、
きっと世の中は気持ち良く、住みやすくなるんだろうと思う。
[1回]
PR