『ガムの起源 お姉さんとコロンタン』前田司郎 著光文社※以降ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください
不思議な夢生物コロンタンとお姉さんがしっちゃかめっちゃかする話だよ!数か月前、まいねが資格試験勉強のために読書断ちをしていた頃の話。
しゃばけシリーズの読み始めで読書ペースもちょうど上がりはじめていた頃の
読書断ちだっただけに、急に心の拠り所を失くしたような状態になって
ストレスも溜まりやすくて、流石にこれじゃあいけないと思い、
ほんの少し”息継ぎをする”ようなつもりで図書館に行ったんです。
大好きな活字に囲まれてやっと落ち着きを取り戻したとき(うわぁ)、
万城目学の隣に前田司郎はいたのです。
そしてちょっとした出来心で本書を手に取ったのが運の尽き、ものすごい衝撃を受けました。
その衝撃の前には、図書館の中であてもなく棚を見回っていて、
ふと気になったタイトルに手を伸ばした時に逆側からも手が伸びてきて、
アッと思って横を見ると、ちょっとくせっ毛がかった髪をシンプルに束ねたおさげが似合う、
地味目な黒ぶち眼鏡の(そして眼鏡をとると美人であることがほんのり窺い知れる)女の子と
目が合って、お互いシャイなもんだから曖昧にはにかみ合う…
そんな衝撃だったら良かったと思わずにはいられません。
あらゆる意味で、そう思わずにはいられません。
ですが現実には本書を一人で手に取って眺めてしまったわけで、その衝撃を言葉にするなら、
耳の穴から細い生殖器をぶち込まれて、えっと思っている間に脳にまで達したそれが
白いモニョモニョした生き物を頭の中に植え付けた感じです
(本書表紙のコロンタンの見た目がまさに白いモニョモニョのイメージ通りです)。
そのモニョモニョが、何というか、痙攣しているような動きをするのです、頭の中で。
白くてモニョモニョしてるから一見無害そうなのに、痙攣のような変な動きをするものだから、
自分の頭の中に生まれたものなのに、何か触りがたいのです。
人肌くらいのぬくもりで低反発枕のように気持ちいい触り心地かもしれないし、
触ろうとした瞬間にマンドラゴラのような叫びをあげて、ものすごい速さで飛び跳ねそうな
気もするのです(もちろんマンドラゴラの叫びは聴いたことないけど)。
図書館にある前田さんの本を、最初の数ページだけ一通り読んでみて、
どの本にもこのような生き物を頭の中に産み付ける強烈な感覚がありました。
この人はものすごい天才か、紙一重のアウト側かもしれないと、戦々恐々としつつも
そういうものを頭の中にいっぱい飼ってみたいと考える自分も確かに居たのです…
本書のイメージを一言で言うなら「不条理ギャグを文字に起こした感じ」です。
文体(ですます調、だである調など)、人称、口癖などは一致せず数行単位でポンポン変わり、
作品中に作者が登場するなどのメタネタがありすぎるほどにあり、
文脈なんてあってなきが如きです。…あれ、良いトコないじゃん?w
しかしながらどっかの誰かが言ってたのですが、
「偉い誰かより、芸人などの方が案外核心を突けることがある」
こともあります。地位や知識があり、世間的に認められている人ほど、
核心を突くようなことを言おうとすると抑止力がかかります。影響が計り知れないですからね。
ですが、芸人などの場合は”冗談”としてその網を掻い潜ることができるので、
するっと核心を突けちゃったりするわけです。
まいねが三十余年をかけて築き上げた哲学
”この世に深淵なものなどほとんどない”
ということも、本書でいとも簡単に言及しちゃってる気がするんです。
宗教とか、差別とか歴史とか、戦争、恋愛、生命など、まるで私たちはすごく大切なことを
考えて生きているようでいて、ちょっと距離を置いて見つめ直してみると、
案外どれもこれもどうでも良かったりします。
何もかも深刻に考えすぎて沈んでしまいそうな人に、ちょっと息継ぎできる
軽さを与えてくれるかもしれない一冊です。
ただ、電車の中などで読むと吹き出してしまうかもしれないので注意!
[2回]
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