『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー 著(初版:昭和53年7月)原卓也 訳新潮文庫※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
金、女、名声…欲しいもののためなら手段を選ばず、家族をも顧みない男、フョードル・カラマーゾフと、その血を引いた三兄弟。女たらしで血の気が盛んな長男ドミートリィ、知性に溢れ、冷徹な無神論者、次男イワン、そして敬虔な修道士、三男アレクセイ。ある日フョードルが何者かによって殺され、遺産争いや共通の愛人の事で元々父親と折り合いの悪かったドミートリィは、父親殺しの嫌疑をかけられ投獄される。しかし裏でイワン、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフの暗躍により事件は思わぬ方向に進んでいき…神と人間、そして金について、ドストエフスキーの哲学、世界観が生々しすぎるほどに生々しく描かれた傑作。知識人(笑)はみんな読んでる、『カラマーゾフの兄弟』。
本を読むにもある程度”体力”が必要だし、年を取ってくると
だんだん長編が辛くなってくるので、ここらで読んでおこうと思い手に取りました。
今更書評(って程でもないけど)する必要もない超メジャー作品ですので、
いきなりサクッとまとめてしまいます。
本作品では、それぞれのキャラクタが神を信じること/罪を犯すこと、
愛すること/妬むことなどの相反する要素について明確な持論・態度があって、
善人は善人なりに、悪人は悪人なりに非常に生き生きと、魅力的に描かれていると感じました。
特に、ドミートリィに人間としての尊厳を傷つけられた二等大尉スネギリョフの、
誇りを失いたくはない、だけど家族を守るために恵みを請わなくてはならないという葛藤が、
ありありと描かれているシーンなんかは、もう涙なしには読めません( ;∀;)
各キャラクターについて本名、正式名称、親しみを込めた感じなど、
三種類以上の呼び方があるあたりなんかは、ちょっと把握するのに慣れが必要ですが、
思っていたよりエンターテインメント性があって読み易く、
とはいえ底は深く、読み込むほどにいろんな感情が浮かんできそうな作品でした!
蛇足かもしれませんが本著を読むにあたり、予備知識として
最低でも2点知っておいたほうが良いと感じました。
一つは「ロシア正教の歴史」。正直、Wikiレベルでも良いと思います。
寒さ厳しい気候や様々な苦難の中、神への祈りを心の拠り所としてきたロシアの庶民たちの、
素朴で力強い信仰心。そのロシア正教がたどってきた歴史そのものが、
この作品の核であると言っても過言ではありません。
もう一つは「当時のロシア通貨の価値」。お金をめぐる人々のどろどろした欲望も、
この作品におけるキモです。女を勝ち取るために、一夜限りの宴会を楽しむために、
使った金額を知るのも良いでしょう。
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