『BAND OF THE NIGHT』中島らも 著講談社文庫※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
主人公、大島(通称”ラム”)は、コピーライターを目指しながらも中々芽が出ず、毎日のように酒とクスリ(主に睡眠薬、咳止めシロップ)を喰らい、ラリって過ごしている。そんな彼の下に集うのは、どうしようもないジャンキーばかりで、
クスリと、ただれた性に塗れた毎日を過ごしており、
いつしかそんな彼の住処は地獄の家(ヘルハウス)と呼ばれるほどに。ラリった脳に怒涛のように押し寄せるイメージが凄まじい、衝撃の一冊。のっけから余談ですけど・・・
や~や~や~、図らずもめっちゃタイムリーなネタになっちゃいましたねw
本著は
第1回瀬戸内ブッククルーズの、ながいひるさんで購入したもので、
普段の店舗でも、中島らもは良い位置に置いてあったように記憶しています。
もしかしてめっちゃ好きなのかしら?…話しかけてみれば良かったな。。
閑話休題。
主人公が”大島(ラム)”ってあたり、完全に”中島らも”とかけているのがバレバレの
しょうもないネタを織り交ぜつつ(w)、日本において、ドラッグについて書かせたら
この人の右に出るものはいないだろうと思われる中島らもの作品の中でも、
特にトリップの場面の描き方が凄まじく、素晴らしい作品です。
#日本中探したって、”ラリリ心地”、”大ラリリにラリる”なんて言葉を使う人はいないでしょうw
彼らはいわゆる大麻などのクスリもやりますが、基本的には睡眠薬や
咳止めシロップなどといった、私たちの生活の身近にあるものを、
規定量の数倍摂取することでトリップするという薬物中毒です。
まずその、一歩間違えば自分もその道に踏み外しうるというクスリの身近さに慄然とします。
トリップの場面の描写は、主人公がコピーライターを目指しているということもあってか、
十数ページに及ぶ名詞、イメージの羅列によってなされ、作中に何度か出てきます。
あるいは「ラプラスの魔」のように、世界のすべてを観測するとしたら、
このように無数の名詞が頭の中に浮かぶのかもしれません。
まるでランダムに並べられた意味不明な言葉に見えますが、よく見ると(文脈はさておき)
不明瞭な言葉は一切ないことに気付きます。
小川を枯葉が流れるように、時には速く、時にはその場でくるくる回って留まって
イメージの言葉にも緩急が付いており、頭の中でものすごいスピードで像を結びます。
目はなるべく速く規則的に一行一行の文を追い、中島らもが描いた神経伝達物質の千鳥足を、
なるべく正確に頭に描くことで”トリップ”の世界に近付けそうな気がしてきて、
ついそんな読み方をしてしまいます。読み終わった後は、
ちょっとクラクラしちゃうような”文学ガンギマリ”状態になることと思いますw
不思議と何度かそんなトリップをしているうちに、ラムが行き詰っているときのトリップは
コールタールのように重く、オーバードーズ(薬物過剰摂取)、自殺した仲間たちへの
追悼のような最後のトリップでは走馬灯のようにスピーディーで、何故か涙が出てきたりと
違いを感じるようになってきます。
何とも分かりにくい感想文になってしまいましたが、本著の中に出てくるジャンキーたちの
生活の中には、中島らもがエッセイなどで書いていた実体験(幻覚サボテン(うばたま)を
食べるところ、死者の音楽を聴いていたら、アパートの下の方から無数の顔の塊が
せり上がってきたところなど)が含まれており、
リアルなトリップ感(私は本当にしたことはないんだけど)が味わえます。
極上の読書ならぬ”毒書”、おススメはしませんが…ハマっちゃうかもよ?( *´艸`)
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