岡山と青森の意外な関係、第2回目はこの記事を書くきっかけになった人である、
青森の小説家、川上健一さんです。
<『ビトウィン』>
まいねと、岡山での川上さんとの出会いは、偶然立ち寄った喫茶店「ぴいぷる」のマスターのお話から。
(食べログでもマスターのお話を書いてます。
こちら)
岡山では最もメジャーな新聞、山陽新聞に連載を持っているそうで、
岡山のネタを集めに、集英社の方と一緒にお店に来るんだそうです!
恥ずかしながら話を聞くまでは川上さんの本を読んだこともなく、新聞を取ってもいなかったので、
全く存じ上げませんでした(『雨鱒の川』のタイトルだけはうっすらと聞いたことがあるくらい)。
「同郷の士を知っとかれぃ!!アンダスタン?」
「はーい、分かりましたぁ」
ということで、早速図書館に走った次第。。
早速借りてきた1冊が上記の『ビトウィン』。川上さんが体調を崩され、
執筆から10年遠ざかっていた頃の、超貧乏だけど温かい人に囲まれた
楽しい生活を描いた、ほっこりするエッセイです。
我ながら間の悪いチョイス!!川上さんの小説に触れてないじゃん!w
”ビトウィン”とは英語の”between”、良く言えば中庸、悪く言えばどっちつかず(w)の人や
状態を指してこう表現されています。このエッセイ自体、ほぼノンフィクションなんでしょうが、
お酒を飲みながら話すオジサンのような、ちょっと面白おかしい”盛り”が入っていて、
小説と随筆の”ビトウィン”のように感じました。
っていうか、現実にこんな良い女の奥さんとか、いじらしい娘さんなんか
存在するはずがないじゃないか!!
・・・若干興奮してしまいましたが、久しぶりに活字で笑わせていただいて、すごく爽快でした。
何より、川釣りが大好きな川上さんの姿を、趣味を同じくする父と重ねて読んでしまい、
『至高の戦い』の中で、大イワナを釣り上げようと格闘するその胸の内の描写、
挙句の果てには冬の川に飛び込む、間違った方向の勇敢さに
「親父、アホか!!」
とツッコんでしまいましたww
作品はとても温かい描写に溢れていますが、幸せという言葉はほとんど(全然?)出てきません。
恐らく「幸せ」と言ってしまうと”ビトウィン”ではなくなるからだろうなぁと思うのですが、
作品の最後で、執筆を再開し「超貧乏」から「貧乏」くらいになった頃の奥さんの言葉に深く共感しました。
「またあの頃のように超貧乏してもいいなんていってません。楽しかったと言っただけ。・・・」
「ダーメ。後を振り返らない。今はそういう時期じゃないの。・・・」
まいね家も幼少期は似たような生活で、ご飯のメインと言えば父の釣ってきたイワナやヤマメ、
男3人兄弟はどんなに喧嘩をしても、狭い家の中なので寝るときは一緒、だからすぐに仲直り。
食事は必ず家族全員が揃い、悪いことをすれば拳骨が降ってくる・・・
川上家の生活から、まいね家の日々を思い返しながら読んだのですが、
それでも、前に進んできた今の自分を差し置いて「あの頃は良かったなぁ」とは思いたくないですね。
強くなった自分を再確認できたという点でも、意味のある作品でした。
・・・あ、あと小説のほうは身銭を切って近いうちに買おうと思いますw
[1回]
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