『行かずに死ねるか!』石田ゆうすけ 著(初版:平成19年6月)幻冬舎文庫※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
それまでは漠然と描いていた夢、それがある日占い師に「貴方は順風満帆の人生を送るわ」と言われたことをきっかけに(そんな人生、自分で変えてやる!)と半ば逆ギレ気味に、著者が踏み出したのは何と、自転車による世界一周の旅。95,000Kmを7年半かけて走り切った彼の旅は、桁違いのヒヤリと、ニヤリと、ホロリに満ちています!!チャリダーってのは中々に業の深い生き物でして、程度の差はあれど、
どういうわけか苦しみを求めてしまう傾向があるようです。
自転車に乗らない人からすれば
「何を目指してんの?」
って感じでしょうが、
「まぁ何というか…苦しくないと面白くないんだよね」
中々この感覚って、伝えにくいんですよね。
思うに、まいねは割と自分を追い込んでいくタイプで、
とはいえあまりにも過酷すぎて(今日はマジでだめかも…)と思うようなライドが
何回かあったんですが、そんな時に家に着いてしみじみ思うのは
(うわー、今日はヤバかった。けど、無事生きて帰ってこれて良かった!)
ということ。”生きててよかった”を手軽に得る手段として、高所やスピードなどにより
危険なことをして、死に直面することで反動的に生を実感することが挙げられますが、
自転車の場合は「自分の限界を超える」ことで他人に迷惑や心配をあまりかけず、
純粋な生の喜びを感じることができる…そんなところが魅力なのではないかと分析します。
また、自転車自体が寒暖、傾斜、風、路面の凹凸などの影響を
モロに肌で感じられる乗り物ということもあってか、普段は何とも思わないような
”日常”を、ものすごくドラマチックに感じることがあります。
路側帯にたまった砂や、雨天の白線の滑りっぷりなどの危険、
吐きそうになりながらヒルクライムしているときの、すれ違いのローディーの応援、
そっとお水のお代わりをくれる喫茶店のマスターの優しさ・・・
地方差は多少あれど、同じ文化圏内の日本においてなおドラマチックなのですから、
文化の違う外国ではもっともっと、ドラマチックなことが起こるのでしょう。
実際、本著の中においても、まるで計ったかのように以前出逢った人と
別の国で再会したりなんてことが起きていますし。
7年半が1冊の文庫にまとまっているということで、
やはり少し内容が不足しているなぁと感じるところはありました。
食事のことや、長居している国での生活の様子、各国の言葉をどうやって覚えたかなど…
とはいえ、これはこれで良いものだなとも思いました。
まるで、行間が誘ってくるようなんです。
「だぁ~、何やっとんじゃ!ほら、早ぅペダル踏め!!」
と。我が故郷の寺山修二の言葉ではありませんが
”書を捨てて旅に出よう”という気分になります。
自転車乗り、特にロングライダーの方には強くオススメしたい一冊です。
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