『御宿かわせみ』
平岩弓枝 著
文春文庫
※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
江戸の大川端にある小さなお宿旅籠”かわせみ”。そこに泊まるお客さんをめぐって、数々の事件が起こり、宿の女主人るいとその恋人神林東吾はそれらに巻き込まれつつ、次第に強く結ばれて行く…はい、また時代小説に戻ってまいりましたw
「御宿かわせみ」は、大人気のオムニバス形式のシリーズもの時代小説なのですが、
女性作家ならではというところでしょうか、今までご紹介してきた作品とは毛色が違っていて、
あくまで”江戸時代を舞台にしたサスペンス”という感じで、
(殺人事件などはあるものの)チャンバラシーンがほとんどなく、
その代わりに下町情緒だとか、人間味と言った部分にスポットライトを
当てた作品となっています。
人情に厚く、亡父が八丁堀の同心であったるいは、ついついお客さんの事情に
お節介を焼いてしまい、そのため恋人の東吾とともに事件に巻き込まれてしまうのですが、
両想いでありながら、中々結婚には至らない二人の関係にヤキモキし、
どう転がっていくか分からない事件の経緯にハラハラさせられます。
一話一話は短いものの、そこに登場するキャラクターは少なくなく、
事情が複雑に絡んでいるため、頭の中で人物相関図が描けないと
事件の全貌を把握するのが中々大変ではありますが、
テレビもスマホもない江戸時代、お宿かわせみにお世話になっている気分で、
ゆっくり読みたい本でした。
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