『夢の階段』
池波正太郎 著
新潮文庫
※以降、ネタバレを含むかもしれないのでご注意ください。
池波正太郎の処女小説『厨房(キッチン)にて』を含む短編集。人間味のある文章、独特な価値観、そしてもちろんおいしそうなご飯。池波ワールドの原点が味わえる一冊です。非常に個人的でマヌケな話ですが、”池波と言えば時代物”という固定概念があっただけに、
最初の短編『厨房にて』の書き出し
電話が鳴りだした。にいきなり面喰ってしまいましたw
まぁそんなマヌケはさておき、冒頭で書いたとおり人間味に溢れた、
とりわけ「人が人を信じるということ」を軸に据えた作品が集まっていて、
時に温かく、時に煮えたぎるような、エネルギーに溢れた短編集となっています。
キャラクターには池波自身の価値観も反映されているのでしょうか。
『厨房にて』で佐久間兵曹が、(本来は)高価な萩焼を、飯を食うのに使い
「俺は、きれいだな、好きだな、と思った物だけ手に入れて、そいつを毎日毎日、 せっせと使ってやるんだ。飯も食い、水も茶も飲む、味噌汁も入れる。 するとな、いくら気位の高いやきものでも、だんだん親しみやすい、 愉快なツラをしてくる。」という言葉には何度も頷き、『娘のくれた太陽』で、
(訳あって自分が父とは言えない)父が娘に奢ったチャーシューメン、
押しつけがましくなく、温かなそれでいて少しだけ贅沢をした気分になれる、
文字どおり温かさに溢れた、非常に絶妙なメニューのチョイスに…
感動のよだれが出ましたw( *´艸`)<今晩のメニューは決まりね!
”現代人の忘れてしまった大切な何か”とか勿体ぶりつつ押し付けるようなこともなく、
乾いた心に染みこむように”人を信じること”の美しさが染みてくるような作品たちです。
ヒアルロン酸配合リップクリームのように、寒い時期の心のカサカサを
治してくれるかもしれない優しいお薬はいかが?
[1回]
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